密やかに楽しんでいた、姉のお札。
うっかり見つかってしまったら、後は早かった。あっという間に手から奪い取り、背を向ける姉。その姿は、まるでハイエナのよう。
ちょっと間があってから、手元からお札が消えた事実を知った和が、大泣きしているのですが、その手にはしっかりと握りしめられたお札が一枚。
おぬし、なかなかやるな。
(川辺)
二人は今、見事に背を向け合って立っている。
ここに見えるのは、宝ものを奪われたヒトと宝物を奪い取ったヒトの物語。
でも、考えてみて。
もともとの略奪者は、どっちなの?
小さいがしたたかな略奪者は、奪われても一枚は放さない。
もともとの所有者は、くしゃくしゃになった一枚をとりあげようとはしない。
それは、もうくしゃくしゃだし、そこまで泣かせたいとは思っていない。
これは譲れない。だって、大事なものだから。
でも、泣いているのは気になる。だって、大事な弟だから。
少し肩があがった姉の背中から、そんな気持ちが伝わってくる。
こちらからのアングルと、向こうからのアングルがあったら、違う物語が見えるはず。
(宮里)