2016年12月
実家に帰省した折の一枚の写真。大好きな新幹線を見つめる和。その姿を愛おしそうに見つめ、カメラに収める姉。のどかな写真に見えます。
この一枚の写真に行きつくまでに、実は長い物語があります。
いつもより破格に長いブログですが、おつきあいください。
保育園からそのまま、新幹線で1時間程度の実家へ向かおうという「帰省大作戦」は、出だしでくじけました。
まず、迎えに行ったとき、和が保育園から帰りたくなかったのです!何とかなだめてやっと保育園の玄関まで連れて来ましたが、今度は靴を履きたくない!と。
電車に間に合わなくなってしまうから、靴を片手に持ち、和を小脇に抱えてダッシュで駅へ。
駅では、大荷物とともに、姉が待っていてくれました。
おかげで、目当ての電車に乗り込み、よし予定通り!
電車はちょうどラッシュでギュウギュウ詰め。
和を抱っこすると、私の組んだ腕の上に立ち上がり、しばらくぴょんぴょん。
よし、いい感じ!
ところが、すぐに飽きて、「降りる、降りる」と 大騒ぎになってしまいました。
奥の手の作戦としてちょっとおせんべいを食べさせたら、「もう一個、もう一個」と終わりがない。
新幹線への乗り換え駅では、新幹線かまぼこが欲しいと泣き崩れ、なんとか待合室に入ると、今度は「新幹線すごろく」が欲しいと大絶叫。
おにぎりとお弁当を買い、待合室の椅子に座った途端に、「にぎにぎ食べたい!」というので手渡すと、開けられないと怒りだし。手伝おうとすると、手伝うなと怒り、やっと開いたおにぎりを一口食べました。
これで一安心と思ったのも束の間!
一口食べたらすごろくを思い出したのか、「すごろくがいい」と泣きだし、なんと!!
おにぎりを投げ捨てたのですっ!!
待合室中の人たちは、和の泣き声にびっくり! 姉もいたたまれなくなったのか二人で目を合わせて「出よう」サインを交わし、投げ捨てられたおにぎり拾い待合室を出ました。
「かんかんしーん(新幹線)」と売店の前で泣く和を抱えてホームへ移動。拾ったおにぎりは食べられないからゴミ箱に捨てると、「にぎにぎー」とホームで突っ伏して大泣きでした。
なんとかなだめ、やってきた新幹線にとにかく乗り込みましたが……。
新幹線の中では、シウマイをひと箱抱え込み、ちょっと姉が摘もうものなら大声で抵抗。
「他の人に迷惑になるから、私たちは別のものを食べよう」と姉に我慢してもらうしかありません。
とにかく姉と2人、静かに時が過ぎるのを待つばかりでしたが、和は散々泣いて、散々暴れたけれど、目的地まであと一駅というところで、やーっと体が柔らかくなってきました。
姉にもシウマイを1つわけて、「おいちいね」と笑顔で言うもんだから、姉はすっかり許しちゃって。
そしてようやく降りる駅につきました。
新幹線から降りたら、大好きな新幹線をちゃんと見ることができて、大興奮!
そこでやっと撮れた一枚の写真です。
涙と汗の思い出なしには見られない、一枚の写真です。
(川辺)
子育てとは、「思い通りにならないこと」の連続、という話を聞いたことがある。
親は育てる側だけれど、子どもはただ育てられているわけじゃない。
子どもは自分で育っているつもりだ。それに、自分で育ってもらわなくちゃ困る。
でも、自分で育とうとするその本人は、キモチやカラダやナンダカンダの影響により、時にどうしようもなくなる。どうしようもなくなったときは、どうしようもないんだね。
どうしようもないわけだから。
どうしようもなくなった和くんを抱えての帰省の物語は、誰の中にもある子育ての思い出と重なる。あったよねー、と。お疲れさま!とねぎらいたくなる。
みんなそんな風にして大きくなったんだよね、と。
まぁ、子育ての先輩としては、尚子さんが考えた「帰省大作戦」には、もともと無理があったんじゃないの!と言いたくなるけれどね。
(宮里)