毎日、小さな子どもを待たせて、姉の長い髪を乾かすのは、少々骨が折れます。
待ちぼうけの和は、よたよたと歩き回り、姉の膝に寝転がってみたり、私の背中によじ上って、頭から膝の上に落ちてきたりと毎晩サーカス状態です。
でも、この日は違いました。
ふと、私がやっているこのブラシが急に目に入ったようで、上下に動くブラシを一緒になって動かしているうちに、ぐっと強く握って私の手から自分の手の内に。
残念、ブラシの背を髪に当てているから解かしている訳ではないのだけれど、うれしそうに何度も上下させています。
その道具の意味をなしていなくても、その動きそのものが楽しいんでしょうね。
(川辺)
和くんにとっては、何もかもが不思議。何もかもが興味深いのでしょうね。
毎朝繰り広げられる髪を乾かすという行為は、不思議そのものかもしれない。じっとしているお姉ちゃんもいつもと違うし、お母さんの様子も違うんだろう。それは、和くんにとっては手に負えない複雑な行為だったのかもしれない。
それが、ある日突然に、「やってみる」になる。それが、どうして「今」なのか、それを知りたくなる。
『上下に動くブラシを一緒になって動かしているうちに』という一文が目に留まった。そうか!やっぱり。
意味はあと。まず動き。一緒に動かしたから、動きが和くんの中に入った。お母さんの手から奪い取り、自分でやってみる。ほら、上手に、上下させている。
ブラシがどちらを向いているかのチェックは、まだ先のことだ。
(宮里)