ちいさなお子さんをお持ちのご家族をメインターゲットとする雑誌『かぞくのじかん』(婦人之友社)の「仕事と生活の調和」というコーナーに「保育の量と質は、どちらも大切」というタイトルの記事を掲載していただきました。量も質も大切だけれど、では「保育の質とは?」ということで、「認知能力と非認知能力」のことを書いてみました。下記に一部引用いたしました。お読みいただければ幸いです。 (瀬木)
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(略) では「質の高い保育・乳幼児教育」とはどのようなものなのでしょうか。 (略) それがどんなことなのかよくわからないまま、一部の情報を鵜呑みにしてしまうことも多いのではないかと気になります。
保育・幼児教育の専門家の間では、このところ「非認知能力」という言葉を耳にすることが多いのですが、お聞きになったことはあるでしょうか?文字を覚えたり、計算したりというような小学校以降に机に向かって勉強するようなことを「認知能力」と呼びます。乳幼児期には絵本を読んで言葉への興味を深めたり、拾ってきたどんぐりの数を数えたりというようにして、生活や遊びの中で認知能力の基礎をつくることは、もちろんだいじです。
それに対し「興味を持ってやってみる」「やりはじめたことを工夫しながら続ける」「友達と協力してやり遂げる」などを「非認知能力」といいます。そして今、非認知能力を幼児期に培うことが重要であると、世界的にいわれるようになってきているのです。
どんぐりを使った遊びを例にあげてみましょう。
散歩中にたくさんのどんぐりを見つけ「すごい!拾って帰りたい」と関心を持つことは非認知能力を培っていることになりますね。「手には持ちきれないから、次の時は袋を持っていこう」「いくつとれたかな!」と考えるのは「量や数」を意識していますから、認知能力も育っていると言えると思います。拾ってきたどんぐりでコマを作って遊びたい。でもうまく作れない。そんなとき、友達にちょっと教えてもらってできあがり、まわして遊べたというような経験も非認知能力を培う上で重要です。
このように、「子どもたちは日々の生活の中で、認知能力と非認知能力を絡ませあいながら学びに向かっていく」といってよいでしょう。
もし、散歩に行かずに保育者がどんぐりをひとり3個ずつ渡し、見本通りに皆、同じどんぐりゴマを作らせたとしたらどうでしょう。できあがったコマは、もしかしたらそちらの方が見栄えがよいかもしれません。しかし、非認知能力を培うチャンスはどんぐりを自分で見つけ、拾い、工夫して作ったときより少ないといえるのではないでしょうか。
非認知能力と認知能力を共に育てていくためには、保育者は子どもの年齢や発達に応じ、あるいは日々の様子をよく見て、ワクワクするような活動を考えたり、関心を持ちそうな保育材・教材を準備したり、子どもだけでは遊びが展開しないようであれば言葉がけをしたりというような関わりが必要で、これは「保育者の専門性」のだいじな要素の一つです。(以下略)